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悪戯する子はだぁれだ☆

2016年05月16日 19:00         

2019年04月05日 19:00         

久潟椎奈

穏やかな朝。
静謐であるはずの異端教会に絹を裂くような悲鳴があがった。

 

「祈っ、一体どうしたんだ!?」

 

大聖堂で聖務日課をこなしていた衛示は、
愛妹のただならぬ声を聴いて裏庭へと駆けつけた。

 

「に、兄さん……こ、これ……っ!!!!」

 

二本の棒の間に紐をくくりつけて作ったいくつもの物干しに、
干したばかりの洗濯物が朝の爽やかな風に舞ってはためいている。
そのひとつをわなわなと震えながら祈が指さす。
衛示は一瞬それが信じられなかった。
よもや自分の身にソレが起こるとは微塵も思わなかったのだ。

 

「なんてことだ……ここ数年はなりを潜めていたというのに、
 なぜ今となって……くっ、一体いつ!?」

 

衛示はこれ以上それが祈の目に入らぬようにすばやく回収した。
洗濯直後のそれはひんやりと冷たい。

 

「祈、お前は大丈夫だと思うが一応身の回りのものを確認しなさい」

「はいっ!」

「それから、他トライブにも緊急連絡だ!」

 

穏やかな朝は一瞬で緊迫した。

 

 


「……なんだ?」

 

ニナは朝から不思議な視線を感じていた。
すれ違う黒の魔術師たちが一様に微妙な顔をするのだ。

「あっ」と口を開きかけて、何も言わずに立ち去っていく。
ニナは隠し事を見える形でされるのが嫌いだった。
隠したいならば隠し通すべきなのだ。
すぐにニナの苛立ちは沸点に達し、
やはり何かもの言いたげにして口元を覆った、
黒の構成員に詰め寄った。

 

「おい、貴様! 私になにか言いたいことがあるなら言え!」

「ひぇっ、いえ、あの……その……っ」

 

捕まった構成員を他の者が遠巻きに眺めている。
助けを乞う視線を投げかけるもニナが相手では、意味がない。

 

「なんだと言っている」

「や、珍しいなと」

「……なにがだ?」

「いえ、や、お似合いですよ! いいと思います自分は!」

「……は?」

 

意味がわからずに眉間に皺を寄せるニナに、
たまたま通りかかった板鞍が朗らかに言った。

 

「お、ニナ様イメチェンですか?」

「イメチェン?」

 

構成員の襟元を掴んだままニナが振り返る。

 

「ニナ様もご結婚が決まって意識が変わられたんですかね。
 いや、可愛らしくていいと思いますよ」

「言っている意味がわからないんだが……」

 

心底わからないという顔をするニナに、
板鞍のほうも「はて?」と首を傾げる。

 

「え、ご自分でされたんじゃないんですか?」

 

コートの後ろと言われ、ニナが身体を捻る。

 

「なっ……!!!!!」

 

そこでようやくニナは皆の微妙な顔をする理由に気づいた。
愛用している真黒なコートが―――

 

「なんだこれはぁあああああああああ!」

 

ニナの叫び声が黒の本部に轟いた。

 

 


情報取得にかけてはトライブ1を誇る赤では、
祈からの連絡よりも先に既に朝の珍事について嗅ぎつけていた。
事の次第を知ったラプラスは爆笑している。

 

「やーこれは驚いたね! 奴らまだ生息してたんだ」

「ぜっんぜん笑いごとじゃありませんよっ」

「兄さん落ち着いてっ」

 

顔を真っ赤にして怒鳴る衛示をみて、
さらにラプラスが笑う。

 

「フリッツどころかあのナハトブーフすら、
 出し抜いた魔術師を、一体誰が止められるっていうのさ?」

 

永い魔術師たちの歴史において、
決して表にでることはなく、
けれどずっと語り継がれてきている集団がいる。
それを組織といっていいのかはわからない。
彼らは霞のように姿を変え存在しているので、
その規模も組織体系も赤の情報力をもってしても、
正確に把握することは困難であった。

その集団の正体とは―

 

「あるときは白の調停者フリオの、
 ハットの中に大量の飴を仕込んで、
 脱いだときに飴の雨をふらせたり、
 フリッツのパンツの裏側に『ふりっつ』と

 子供みたいな字で名前を入れたかと思えば、
 ナハトブーフの靴の中に防臭剤を入れたうえで気づかせず、
 一日の終わりに靴を脱いでようやく気づかせて、
 ちょっと恥ずかしい気持ちにさせたこともある、
 いたずら集団、通称『桃のトライブ』
 奴らは不定期にいたずらを始め、キングオブいたずらっ子、
 『愉悦の魔術師』を決めるまで、活動を続けるのよ」

 

ニンマリと笑ったラプラスに衛示はごくりと唾を飲みこみ、
回収した洗濯物をしまった胸元をぎゅっと握りしめた。
祈は、楽し気なラプラスに言えなかった。
メガネのレンズが外されているようですけど、と。

 

「いいや、負の連鎖は断ち切らなければなるまい」

 

ニナが決意を秘めた目をして立ち上がり、ハリセンを掲げた。

 

「ふざけたあいつらに制裁を食らわせる!
 ボケられたらツッコむのがセオリーだ!」

「ちょっとそのハリセンあたしの新作なんだけどっ」

 

謎に満ちた集団、桃のトライブとの、
戦いの火ぶたがここに切られた。

 

 

 

【行動選択肢】
1桃のトライブの暴走を止める
2桃のトライブと接触を図る
3愉悦の魔術師を目指していたずらを始める
4独自の考えで動く

 

 

 

花粉によって鼻がつまっていたせいで、
祭の気配を嗅ぎつけるのが遅れてしまった久潟 椎奈です。
現代の魔術師の皆さま、お元気でしょうか?
月島先生にうかがったところ、
書いてもよいよとOKをいただいたので、
4月ですらもうないのですがお祭りに参戦させていただきました。
ひゃっふー( `ー´)ノ

 

こちらは本編がずっとシリアス続きだったために、
お蔵入りしてしまったギャグシナリオです。
いくつかギャグっぽいシナリオも公開してましたが、
トライブ間の仲が結構ぎくしゃくしていたせいで、
黒の方は参加しづらかっただろうなぁと思っていたので、
どうぞこの機会にはっちゃけてください。

 


謎の集団、桃のトライブについて
実情についてはさっぱりわかってません。
赤のトライブの派生トライブといわれ、
誰かが腕試し的な意味で魔術師にいたずらを仕掛けたのが
最初とされていますが詳しくはわかりません。
※くだらなすぎて過去に真剣に探ろうと思った人間がいないため。
毎年のようにいたずら大会を繰り広げていたみたいですが、
ここ数年のシリアスな雰囲気に空気を読んで自粛していたようです。

 

わかっているのはいたずらを閃いた誰かが、
いたずらをし始めたらみんな便乗。
「これ以上のいたずらはできない!
 このいたずらを仕掛けた奴が、
 キングオブいたずらっ子、愉悦の魔術師だ!」
と皆が思ったいたずらがでた時点で終了です。

 

トライブの色関係なく、みんな参戦してきます。
愉悦の~は誰か個人を指すわけではなく、
そのときの優勝者に与えられる称号なので、
初代とか何代目とかたくさんいます。
もちろん何度も称号を手にした魔術師もいるようです。
もしかしたら歴代幹部の中にもいたずらっこが……???

 

誰がどのタイミングでどんないたずらを仕掛けてくるのかは
未知数なので、撃退しようとするのは難しいと思いますが、
ニナがやる気なのでしょうがない。
ところでニナはなにをされたんでしょうね? 衛示も。

 

いたずらは節度をもって仕掛けてください。
一般人相手に仕掛けてもOKです。
ただし存在秘匿などの基本ルールは守ってくださいね。

 

それでは皆様の参戦、お待ちしております☆

 


エントリーに際してのお願い:

少しでもプレイヤーの方が考えたキャラクターイメージに沿いたいので、
できれば以下のことをどこかに記載してくださると嬉しいです。

 

(私、わたし、ワタシなど)
・二人称 ※わからないと困ります
(君、きみ、キミなど)
・他の人の呼び方 ※わりと重要です
(呼び捨て、さん付け、基本呼び捨てだけど、トライブの幹部にはさん付けなど)
・キャラクターイメージ
(台詞や思考、目的など。出来る限り採用したいと思います)
・戦闘スタイル及び使用武器
(自由設定欄、または行動の欄に記述があると助かります。
無い場合、エントリーしていた際に装備していたものや戦闘タイプを反映する場合があります)
・魔法イメージ
(呪文を使う、予備動作がある、など)
 

 

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