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魔術師殺し・波良闇秋水
2016年06月19日 19:00
2016年07月10日 19:00
チーム月島
![](https://static.wixstatic.com/media/554f04_8de7c1bf9f1a4699a8f4c452f8e23097.jpg/v1/fill/w_688,h_55,al_c,lg_1,q_80,enc_avif,quality_auto/554f04_8de7c1bf9f1a4699a8f4c452f8e23097.jpg)
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その日、鷹野春道は新宿地下道に現れた落とし児を、自主的に退治していた。
『境界の壁』が修復され、窓が開く頻度は大幅に減ったが、それでも時折落とし児は生まれる。それが新宿に現れた場合は、率先して倒す。
自分の好きな街の平和を護る事、それが春道の個人的な望みだった。
地下道にたむろしていたヘンゼルの群れを、春道はドレインナイフでさくっと倒した。
仕事は終わりだ、店に帰ってゲームの続きでもやるか。そう思った時、背後から声をかけられた。
「よーよー、見てたぜ。お前アレだな、魔術師だな?」
振り返ると地下道の奥に、怜悧な顔に笑みを浮かべた、茶髪の男が立っていた。
年の頃は二十歳絡みか。背はやや低く、服装はタンクトップにカーゴパンツ。トライバル柄のタトゥーを入れた腕は、筋肉が引き締まっている。
精悍な肉体に、人懐っこい笑顔。春道はやや警戒しつつも、「そうだよ」と答えた。
言葉からすると、向こうも恐らく魔術師だろう。だがその身から感じる魔力は、明らかに春道より低い。
仮に敵だとしても、一人で対処できそうだ。そう思いながら、春道は探るように問いを返す。
「オレは一応異端教会所属なんだけど、半ば在野の魔術師でさ。
自分で言うのも何だけど、限りなく一般人に近い、無害な魔術師だよ」
「へぇ、そういう魔術師もいるんだな? 俺もトライブとかいうのには参加してねぇが、親近感湧くぜ」
男がそう言って笑う。春道もつられて笑いかけた時、
「まぁそれはそうとして、死ねや魔術師」
男が突如、『バールのようなもの』を創造し、春道に殴りかかってきた。
「はぁ!? ちょちょちょ、どういう流れだよ!」
「魔術師は見つけ次第、狩るって決めてんでな。オメーはイイ奴っぽいがまぁ死んでくれ」
「ざっけんな!」
春道は身体強化魔法を発動し、バールの一撃を回避する。
(どうやら白の魔術師らしいが、練度はオレの方が上だ! 速攻キメてやる!)
そう思いつつ、男の背後に回り込む。そしてナイフの柄で男の後頭部を殴り、気絶させようとしたが――
「甘ぇ!」
瞬間、男の背から黒霧が湧き上がり、春道の打撃を止めた。
同時に男の周囲に赤いウィンドウが浮かび、小さな火球がいくつも生み出される。
「んだこりゃ、黒と赤の魔法!? 何モンだお前、なんの魔術師なんだ!?」
「お前が知る必要はねぇよ。何故ならもう死ぬから」
黒霧と火球が同時に春道を襲う。底知れぬものを感じた春道は、止む無く全力で撤退。
男の「逃げても無駄だぜ、探し出して殺すからな」という声を背に聞きながら、そのまま地下道から出たのだった……
▼
「……ってな事があったんだけどさ。祈ちゃん、なんか知らない?」
男から逃げ出した春道は、店には戻らず、そのまま異端教会の拠点に駆けこんだ。
魔術師を狙う者がいるなら、祈に相談した方がいいと思ったのだ。すると祈は話を聞くなり、表情を曇らせる。
「腕にタトゥーを入れた男と言いましたね……恐らく彼でしょう」
「彼?」
「『波良闇 秋水(はらやみ しゅうすい)』――魔術師殺しと呼ばれる危険人物です。
動機や背景はわかりませんが、毎年夏になるとどこからともなく現れ、魔術師を何人か殺して
姿を消す。いわば『季節限定・魔術師専門の殺人鬼』です」
「魔術師専門の殺人鬼!? そんな奴いるのか……!」
元より殺人鬼の思考など埒外だが、一般人より遥かに殺すのに手間がかかるだろう魔術師だけを狙うとは、普通のシリアルキラーよりさらにどうかしている。春道は戦慄しつつ、問いを重ねた。
「でもあいつ、なんか妙だったぜ? 魔力は弱く感じたのに、ナハトブーフみたいに3種の魔法を
全部使ってた。いったい何の魔術師なんだ? 白、黒、それとも赤?」
その問いに祈は首を振る。
「そのどれでもありません。
お忘れですか春道さん? 高位の魔術師以外にも、3種の魔法を全て使える存在がいることを。
そしてあなたも私も、かつては"それ"だった事を」
「え? ……って、まさか」
「そう、波良闇秋水は『眠り児』。魔術師ではない、覚醒前の眠り児なのです」
その言葉に春道が愕然とする。
そういえば魔術師になる前に、ラプラスから聞いた事があった。
『眠り児のうちは魔力が低いが、3種の魔法を初歩的ながら全て使える』と。
「じゃ、じゃあ何か? 波良闇って奴は眠り児なのに、力で勝る魔術師を次々に殺してるって事か?」
「ええ、白黒赤の初歩的な魔法、『武器創造』『物質分断』『熱量操作』などを駆使して。
しかも魔力は低いですが、殺した相手から遺物を奪い、使える能力は増え続けてます」
「シリアルキラーで眠り児で、しかも遺物コレクターかよ……そんな訳わからんのに、眼ぇつけられちったのかオレ」
ゲンナリしながら春道が言う。祈は安心させるように言った。
「ご安心下さい、私たちが護りますから。
それに魔術師殺しは2年ほど前に、ある魔術師に敗れて以来、姿を現していませんでした。
その間に東京の魔術師は強くなった。3トライブも和平を迎えましたし、総力を挙げて対処できます。
警戒すべき相手ですが、きっと勝てるでしょう」
祈の言葉に春道が、ようやく安堵の表情を浮かべる。
その後、祈から黒と赤にも連絡が行き、3トライブが魔術師殺しの捜索に動き出した。
▼
――その頃、当の魔術師殺しは、路地裏で春道と祈の会話を盗聴していた。
魔術によるものではない。春道と交戦した時に密かに仕込んだ、小型盗聴器による物理的盗聴だ。
彼の頬には笑みが浮かんでいる。これから始まる死闘に、胸を躍らせているようだ。
「……和平を迎えた? 魔術師たちが強くなった? そんな事は関係ねぇ。
俺は魔術師を殺す為に生きてんだ。敵が強ぇから引き下がりましたってんじゃ、
何のために生きてんのかわかりゃしねぇ。
殺し合おうぜ魔術師たち。平和はお前らには似合わねぇ。
祭りはまだ終わらねぇさ、俺が最後の花火をぶち上げてやるよ」
彼はそう言って笑い、街の雑踏に向けて歩き出した。
▼行動選択肢
①魔術師殺しと戦う
②魔術師殺しを捜索する
③特定の魔術師の護衛に着く
④その他の行動
今年も夏が近づいてきましたね。CTⅡ運営チーム月島です。
さて今回は、知ってる人は知っているかもしれない、CTⅠの未登場NPC。
作中最強の眠り児『波良闇秋水』、遅ればせながら登場です。
彼の背景には、復讐や悲劇などに基づく、哀しい動機はありません。
純粋に魔術師の殺傷を、己の存在意義と信じる、正真正銘のシリアルキラーです。
眠り児なので魔力は低いですが、彼は本作のシステム上、特異な能力を持っています。
それは『PCを殺せる』ということ。
彼との戦いに敗北し、死亡したPCは、問答無用で遺物となります。
彼と戦う方は心して下さい。
長い物語の果てに掴んだ平穏を破るのは、隣神のような巨大な敵ではなく、
彼のような一介の危険人物なのかもしれません。
以下に3トライブが掴んでいる、魔術師殺しの戦力に関する情報を記しておきます。
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<ステータス:合計コスト20>
HP:S(無尽蔵のスタミナと、ダメージへの強い肉体的・精神的耐性を持つ)
MP:E(魔力は低く、すぐ魔力切れになるので、遺物の使用が主な戦闘手段となる)
魔法出力:E(魔法の威力はショボいので、様々な工夫によってカバーする)
攻撃力:D(小威力の攻撃魔法しか使えないので、魔術師としては攻撃力は低い)
防御力:E(基本的に防壁魔法が使えないため、敵の攻撃は避けるしかない)
身体能力:S(猿並みの身のこなし・優れた反射神経と動体視力・強靭な肉体を持っている)
知性:E(その場の気分と本能で行動する)
技術:E(あらかじめ幾つかの戦術を立てているが、それらの戦術を全部潰されると弱い)
得意分野:遺物の使用(遺物使用時にほとんど魔力を消費しない)
※MPと魔法出力は補正値マイナス80%
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<クラスとスキル>
クラス:スリーパー(近接/魔法/射撃)
スキル:百年の孤独(単独行動時の行動成功率アップ)
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<装備魔法>
『武器創造』:武器などを創造する。使い慣れてる物や構造を理解している物ほど、創造成功率が高い
『身体治癒』:対象者の治癒能力を高め、傷を癒す。ただし流出した血液は戻らない
『物質分断』:任意の物質を合成する。応急治療などにも使える
『物質合成』:任意の物質を分断する。黒の攻撃魔法の基本にして奥義
『熱量操作+』:任意の物質や空間の熱量を上げる。火球生成などに使える
『熱量操作-』:任意の物質や空間の熱量を下げる。冷気放射などに使える
※平常時は全て低威力・低効果
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<開始時点での所有遺物>
『サマーカーニバル』
自身の周囲5mの平均気温が、摂氏30度を超えると魔力が上昇する
上昇幅は本人のテンションに比例する
眠り児が使用した場合、最大上昇時で、一般的な魔術師と同程度
※2016/06/18 文意が不明瞭だった点を修正
『アクティブソナー』
魔術師のいる場所がなんとなくわかる
『天下独歩』
魔術的な探知を一切受けない、常時起動型の遺物
『A・ヒール』
装備者によってつけられた傷は、物理・魔法問わず、魔法で治癒できない
『マンバレット』
自分を指定した方向に高速で射出する。射出スピードは調整可能
『蟷螂の盾』
魔人や魔女と戦う時のみ、白の高等汎用魔法4種(攻勢障壁・概念防壁・自動回復・生命保護)を
省コストで使えるようになる
『禁魔符』
起動中、半径5m以内にいる全ての魔術師と眠り児は、魔法を使えなくなる
既に起動している魔法もキャンセルされ、有効範囲内は"魔法のない世界"となる
起動時間は1日に合計30秒まで。最短起動時間は1秒(最大でも1日30回しか使えない)
※2016/06/13 文意が不明瞭だった点を修正
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<開始時点での所持品>
○武器創造による『バールのようなもの』と『ナイフ』
○ロシア製トカレフ(8連装自動拳銃)と弾倉4本
○袖に仕込んだデリンジャー(装弾数2発の小型拳銃)
○反射神経や動体視力を増強する非合法の薬品
○痛みや疲労を消し去る非合法の薬品
○筋力を一時的に高める非合法の薬品
○750ccのバイク
○飴
○煙草とライター
○マグネシウム
○液状リシン(強力な毒薬)
○小型盗聴器と受信機
○普通のスマートフォン
○財布と現金50万円
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彼はこれらの武器と、己の知恵と力の全てを懸けて、魔術師を殺そうとします。
なぜそうまでして殺したいのかは不明ですし、なぜ未だ覚醒に至っていないのかもわかりません。
ただどうやら彼は、悲劇的な存在ではありません。
夏の太陽のように明るく、青空の様に透き通った殺意を持つ、真っ直ぐな殺人鬼です。
せっかくハッピーエンドで終わったこの物語が、再び誰かの死によって悲劇になるのか。
それは魔術師たちの行動にかかっています。
皆様のご健闘、心より楽しみにしております。
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<追記コメント:シナリオルール説明>
※NPCは、魔術師名鑑に乗っている公式NPCのうち、
メアリ・サキ・充実・朔実・トリスタニアを除く全員が参加します。
※秋水が奪うのは、参加PC及び名前のあるNPCの遺物と、その所有遺物のみとします。
名前のないモブ魔術師を襲って、遺物を手に入れるという展開はありません。
※モブ魔術師は存在しますが、それらはPC等に比べ、『非常に弱い』ものとします。
PCの意志で、各トライブの従者に指示を出して動かす事は可能ですが、
その場合モブ魔術師が秋水に殺され、彼の所有遺物となるリスクがあります。
※本シナリオでは魔人・魔女が使える『遺物の魔力を引き出す能力』が使用できます。
ただしこの能力を使用した場合、その遺物はロストする可能性があります。
※本シナリオでは拠点効果が使用できます。各NPCの初期位置を列挙します。
秋水:新宿区のどこか
祈:中野区の白の拠点
衛示:品川区の白の拠点
ニナ:豊島区の黒の拠点
ラプラス:江東区の赤の拠点
アルバート・日羽:港区のアルバートの店
秀・春道・寧々里・竜崎・響香:新宿区ウィズクラス店内
空・駆馬・美丹:神奈川県晴嵐町(新宿駅から電車を乗り継いで1時間半程度)
※ストーリーの開始は、作中時間で7月10日の13時。
当日は最高気温36度の真夏日で、夜になってもすぐには30度を下回りません。
※上記の情報は、各トライブの所属魔術師に伝達された状態で、ストーリー開始となります。
トライブ無所属の魔術師は、情報の伝達が遅れる可能性があります。
※ストーリー開始までの詳細な経緯は、以下の通りです。
・春道が秋水に襲われたのが、7月10日の12時頃。
・それから春道は、12時半頃に中野の異端教会拠点に行き、祈に相談。
祈が各トライブに連絡を回している間に、春道はウィズクラスに引き返した。
・春道が店に到着したのが13時。
その時点で秀たちが店に揃ってたため、春道は秋水の事を伝えた。
・同時刻、各魔術師たち(=PC諸氏)にも連絡が回り切った。
同時に秋水が行動を起こし、ストーリーが開始する。
(2016/06/18 追記)
※秋水側もあらかじめ、各トライブの魔術師とその所有遺物については、調べてあります。
なんらかの理由で、各拠点の位置もわかっています。
※秋水にはエントリー開始時点で、1600文字分の行動記述が与えられていますが、
それはストーリー公開まで秘匿されます。
各PCはその行動記述を推察し、有効な行動を取る事によって、彼の襲撃を阻止する事ができます。
逆に著しく不利な行動を取ってしまった場合は、そのPCは死亡する恐れがあります。
つまりこれはいわば、運営側のPC『秋水』とユーザー側の各PCの、対戦シナリオといえます。
※その他、存在秘匿原則などの扱いは、本作の基本的世界設定に準拠します。
◎なお本シナリオはビジュアルノベル形式のリプレイのない、『テキストオンリー』のシナリオです。
CTの醍醐味が薄れてしまうようですが、何卒ご了承頂ければ幸いです。
(2016/06/12追記:『ステータス』『装備魔法』欄に補足を追加、『所持品』欄を追加)
(2016/06/13追記:BBSに寄せられた質問の回答などを、上記の※にて追加)
(2016/06/18追記:ストーリー開始までの詳細な経緯を、※にて追加。
遺物『サマーカーニバル』の効果の詳細を付記)