

ワールドシナリオ独自資料
こちらでは、本作の軍事・政治系シナリオ種別『ワールドシナリオ』に関する、設定資料を公開しております。
以下の設定とルールは、ワールドシナリオのみに適用されるものであり、他のシナリオには影響を与えません。
『メインシナリオ』及び『プライベートシナリオ』は、
これらの設定を覚えなくても、お気軽にご参加いただけます。
皆様それぞれ、お好みに合ったシナリオ種別を、お楽しみいただければ幸いです。
※関連ページ:シナリオ種別について
【アレイダおよび周辺各国の宇宙戦力・地上戦力について】
ニブノス連邦軍
・宇宙戦力
重巡洋艦3隻
軽巡洋艦12隻
空母6隻
特設空母4隻
特設軽空母12隻
駆逐艦48隻
フリゲート96隻
(うち半数弱はNF57型の中古艦)
量産型キャバリアー評価試験隊(量産型キャバリアー16機)
・陸上戦力
4個軍管区・16個師団
ニブノス連邦軍は87年戦役までのライアー式装備と、NF57による「解放」後のNF57式装備が入り混じった状況にあります。ライアー式装備は老朽化や性能の低さから順次退役しているものの、それに変わるNF57式装備の調達は、連邦加盟諸都市の軍事費支払いの滞りや、連邦政府~連邦軍内での着服の横行によりそれほど進んでいません。
更には、3年前の対ブレドム防衛戦争の傷跡が深く、未だ戦力的にも統率的にも対ブレドム戦役以前のレベルに復旧していません。対ブレドム戦役において連邦の結束が問われ、懐疑的勢力が力を伸ばした結果が、現状のニブノス連邦軍の意思不統一と腐敗の原点です。
このような状況を打開するため、連邦軍内部の清廉な将校団と連邦政府内の愛国的・連邦権限強化的志向を持つ派閥は、NF57星系アレンス星区のディルコス重工から大型巡洋艦を含む多数の装備を購入すべく特設予算を組んで、艦隊勢力の近代化と強化に努めていますが、この計画にも連邦政府~連邦軍内部の腐敗勢力が食い込んでおり、軍の速やかなる刷新を阻害しています。
しかし、連邦軍に所属しない組織においては話は別で、例えばダレス・シティのポートパトロールは精錬かつ有能・充実した装備を保有しています。連邦軍の腐敗はニブノス連邦構成諸都市の足並みの乱れや統一意識のなさから来ているものであり、これを改善すれば、より統一的で練度・装備に長ける連邦艦隊が編成できるはずです。
また、都市拠点レベルでの防衛は充実しており、パール・シティ、スライダルポイント、ダレス・シティ、ベナードには小砲台および要塞陣地が築かれています。
さらには、戦時における各都市の優秀船舶戦時動員制度も充実しており、現在准戦時状態のため、民間優秀船舶のうち12隻が特設軽空母として会総動員されており、完全な戦時にはさらに特設空母4隻、特設軽空母16隻が1~3ヶ月以内に宇宙艦隊の戦力に加わる予定です。
この他、連邦政府直轄部隊として、中央儀仗隊(1個中隊)、連邦議長専用船1隻(高速クルーザー船)、長期宇宙戦闘教導部隊「オメガ部隊」(1個増強中隊)とオメガ部隊作戦支援艦(駆逐艦1隻)、複数の通信傍受船、多数の水運搬船を持ちます。
オメガ部隊は連邦政府直属のアステロイドにおける長期ゲリラ活動を主眼として編成された部隊ですが、アステロイド戦闘における練度の高さから対平等党ゲリラ総統任務などに駆り出されています。しかしながら、その活動は連邦内部の裏切り者による妨害や謀略のため、失敗することが多く、オメガ部隊将兵は現行の連邦体制に強い不満をいだいています。
エリノス=ブレドム連合王国軍
憂国士官会派(ブレダ、ニーベンを支配)
・宇宙戦力
巡洋戦艦1隻(大破、ブレダに係留)
重巡洋艦3隻
軽巡洋艦8隻
駆逐艦60隻
フリゲート240隻
量産型キャバリアー16機(評価試験隊)
・陸上戦力
4個軍管区・16個師団+8個海兵師団
ラスドア派(ケセルリアを支配)
・宇宙戦力
重巡洋艦2隻
軽巡洋艦4隻
駆逐艦40隻
フリゲート160隻
・陸上戦力
2個軍管区・8個師団+4個海兵師団
ブレドム連合(バレッタ及び周辺アステロイド支配)
・宇宙戦力
重巡洋艦1隻
軽巡洋艦3隻
駆逐艦20隻
フリゲート100隻
・陸上戦力
1個軍管区・6個師団
その他
ライアー軍事顧問団(ブレダに駐留)
エリノス=ブレドム連合王国は散発的な内戦下にあり、ケセルリア及びニーベンの港湾施設・宇宙プラントは被害を受けています。
極右勢力「憂国士官会」が王族をないがしろにし、貴族の粛清を推進した結果、それに反抗した貴族たちがケセルリアのライアー系貴族ラスドア侯家を頼って決起し、更には憂国士官界会の混乱を見て取った平等党がシンパを決起させ、独立国家「ブレドム連合」をバレッタで成立させた今、ブレドムは3つに分断されています。
ブレドムの額面上戦力は大きいですが、3年に渡る内戦で疲弊し、稼働率は50%以下と低くなっており、大半の艦艇は共食い整備用にモスボールされています。主要艦艇はライアー式で、軍もライアー式訓練を受けていますが、ライアーがブレドムへの援助を縮小し、内戦で荒廃した結果、士気・練度とも低下しています。
その他ポイントディフェンス兵器として、憂国士官会派がブレダに亜宇宙要塞「ヴィマナ」と潜水要塞「ヴァルナ」を保有しています。前者はブレダ首都上空を周回する航空要塞で、無人機多数を搭載し首都ディヤウスの空を守り、軌道上からの強襲降下に対応しています。後者はディヤウスの海深くに潜み、軌道上の艦艇に対し対艦弾道ミサイルによる奇襲攻撃が可能です。その破壊力は一撃で巡洋艦を大破させ得ます。
ライアー帝国アレイダ方面艦隊
・宇宙戦力
重巡洋艦2隻
軽巡洋艦2隻
駆逐艦8隻
NF58星系の大半を領有するライアー帝国は、現在98年戦役の敗北によりアレイダ及び近隣のフォルコウ宙域から大半の軍事力を撤退させています。現在アレイダ方面にはわずかな旧式艦艇が展開されているに過ぎません。これら艦隊はメネディア近傍のフォルク・レーテ要塞に配備されていますが、最小限の警備戦力に過ぎません。
しかしながら、ライアー帝国はNF57全体に匹敵する軍事力を保有しており、一朝ことあらば、大規模な軍事動員をもってNF57に対抗すべくアレイダに戦力を展開する用意はあります。
その他、武装商船隊数百隻がアレイダ方面で活動しており、また、バールスラント、バイシール海賊の抱き込みを進めています。
陸上戦力としては、レバーナ、スタメナ、ニブノス奥地などに戦闘団単位の傭兵部隊を多数展開している他、サイキック特殊部隊であるウロボロス機関D分遣隊、ミュータント特殊部隊であるケルベロス機関K分遣隊がフォルクレーテに待機、サイバーソルジャーによる特殊部隊である武装SS第9義勇旅団エデュアルト・フォン・シークネンがアレイダ各地に傭兵として展開しています。
スタメナII軍
・宇宙戦力
駆逐艦4隻
護衛駆逐艦8隻
・国内左派系宇宙戦力
駆逐艦1隻(ファントップ及びアレイダ人民による基金購入)
スタメナIIは微弱な宇宙艦隊を保有しています。しかしながらその微弱な戦力内でも、内乱の星にふさわしい亀裂が発生しています。
スタメナII宇宙軍を形成する駆逐艦のうち1隻は左派勢力のものであり、ファントップ星系軍の政治将校が乗艦しています。これは政治問題になっていますが、ファントップが政治将校を降ろす兆候は認められません。
スタメナII政府は表立ってファントップと争うことを恐れ、積極的な方策をとっていませんが、その結果として軍内の亀裂は日々大きなものになりつつあります。
ネトヘス首長国軍
・宇宙戦力・陸上戦力
総数不明。おそらく100隻以上~300隻以下の海賊船によって構成されると思われます。陸上兵力は各アステロイドに分散しており、総数は4~6個師団ほど存在していますが、宇宙起動可能な戦力はそのごく一部と思われています。
ネトヘス首長国軍はネトヘス民族の小部族の集合体です。かつてネトヘス民族は無数の小部族に分かれ、離合集散を繰り広げつつ内紛と海賊行為を行っていましたが、3850年代から3870年代のグレイバールの進出に伴い、植民地化されることを恐れて勢力を統一し、より統制力の強い部族連合国家として生まれ変わりました。その過程で、各部族のもっていた戦力も統合され、6つの色で呼称される首長直轄の宇宙艦隊へと再編されました。
現在、ネトヘス首長国軍はロストテクノロジー発掘のため、サイトロプス宙域に並々ならぬ関心を寄せています。
しかしながら、軍の大規模な動員は政治的緊張を生むことから、小規模な動員しか行われていません。
スコルーガ軍
・宇宙戦力
軽巡洋艦2隻
駆逐艦6隻
護衛駆逐艦12隻
・陸上戦力
1個機兵化機動旅団(サイバーソルジャー部隊)
スコルーガ宇宙軍には外宇宙作戦能力は存在しません。基本的に太陽系内防備と哨戒が主任務であり、大掛かりなポートパトロールとそう差異はありません。スコルーガの軌道都市周辺には小要塞が構築され、スコルーガの繁栄を海賊から守っています。
メネディア共和国軍
・宇宙戦力
重巡洋艦2隻
軽巡洋艦3隻
駆逐艦10隻
フリゲート16隻
量産型キャバリアー評価試験隊(量産型キャバリアー16機)
・フォーチュン・マキシマ社私有軍
駆逐艦8隻
量産型キャバリアー16機
1個機兵化機動旅団(サイバーソルジャー、パワードスーツ装備)
・陸上戦力
2個軍管区・8個師団
メネディア共和国軍は比較的優れた装備のバランスの良い艦隊を保有していますが、それは外面だけです。メネディア共和国軍は予算において冷遇され、士気・練度共に低い状態にあります。装備こそメネディアを本社とする軍事企業フォーチュン・マキシマ社の優れた兵器を供給されていますが、実体は張子の虎と言えるでしょう。
メネディア内部ではこのような軍事力の不在による安全保障の欠如が強く懸念され始めています。CY3887年以前のライアーの保護国としての立場はメネディアの安全保障と経済発展を両立させうるものでしたが、ライアー支配体制崩壊後の国際的無秩序は、メネディアに自存自衛を強く要求しています。そのため、メネディアはフォーチュン・マキシマ社とともにロストテクノロジー獲得及び戦力化に強い力を入れています。フォーチュン・マキシマ社自体も、私立軍を保有し、サイトロプス宙域におけるロストテクノロジー発掘に利用しようとしていますが、政治的対立の激化を恐れ、小規模な派遣しか行っていません。
フロンティア・ゲート連邦共和国軍
重巡洋艦1隻
軽巡洋艦2隻
駆逐艦12隻
護衛駆逐艦80隻
フロンティア・ゲート軍は、譲渡されたグレイバール軍の旧式装備を主とする戦力を保有しています。その戦闘力は決して高いとは言えませんが、フロンティア・ゲート軍が主敵とするバールスラント海賊相手には十分な戦力です。バールスラント開発拠点であるフロンティア・ゲートは、海賊の脅威から開拓団を守るため、大規模な戦力を必要としています。また、対グレイバール交易、アレイダ域内交易に経済的基盤を頼っているため、交易路を守るためにも大戦力が必要です。フロンティア・ゲート艦隊の姿は、バールスラント奥地からブレドム王国まで、アレイダ中で見ることができます。
フロンティア・ゲート軍は、フロンティア・ゲート及びロスドルガー太陽系を要塞化しています。その規模は決して大きなものではありませんが、海賊から太陽系を守るには十分なものです。
レバーナ植民地連邦軍
・宇宙戦力
親政府派海賊数十隻
レバーナ植民地連邦は固有の宇宙艦隊を保有しません。首都キャストロ・シティには対海賊小砲台が設置されていますが、機動戦力はレバーナ政府と傭兵契約を結んだ海賊だけです。また、レバーナ奥地は海賊の巣窟であり、反政府派の海賊が鉱山労働者や植民者を搾取するのみならず、政府と傭兵契約を結んだ海賊も搾取行為に加担しています。
アラコス連邦星区軍
・宇宙戦力
戦艦4隻
重巡洋艦12隻
軽巡洋艦24隻
駆逐艦340隻
・陸上戦力
48個師団+海兵8個師団
NF57星系においてアレイダ宙域の玄関口に存在するアラコス連邦星区は、アレイダ宙域の政治経済に大きな影響力を展開しています。特に、アラコスはアレイダ宙域の経済的中心であるメネディア~ニブノス間の宙域における航行の自由作戦を大々的に展開しており、海賊狩りと船団護衛に余念がありません。アレイダ条約により戦艦の侵入こそ禁止されているものの、その地政学的立場から、ニブノスとメネディア、スコルーガ、スタメナIIに強い影響力を保持しています。歴史的にもニブノスとは深い友好関係にありますが、決してアラコスはニブノスを対等な同盟国とはみなしていません。アラコスにとってニブノスは格下のリージョナルパートナーに過ぎないのです。
グレイバール星区軍
・宇宙戦力
戦艦12隻
重巡洋艦26隻
軽巡洋艦52隻
駆逐艦1100隻
・陸上戦力
8個軍管区・64個師団+海兵16個師団
グレイバール星区はバールスラント方向からのアレイダへの勢力展開を進めています。経営困難のため70年代初期にはバールスラントへの勢力展開を一度は諦めたグレイバール星区でしたが、87年戦役後、バールスラント内に5級航路を敷設し、これを拡張することでフロンティア・ゲートとの交通網を確立し、更にはアレイダ全土に商船交通網を展開することを企図しています。
この計画を実現するための力、特に軍事力を、グレイバールは十分すぎるほどに持ち合わせています。長期的に見た場合、NF57におけるアレイダの玄関口の役割をアラコスと争い合える潜在力を、グレイバール星区は保有しています。
【宇宙戦闘について】
(1)移動力
a)一ヶ月の侵攻距離
アレイダ諸国=20光年、NF57、ライアー=30光年
侵攻距離とは、地図上の航路において補給路を整備しつつ侵攻できる標準的な距離のことをいいます。航路街を移動します場合、侵攻距離は半減します。侵攻距離を左右するのは次の要素です。士気、航路と宙域の情報量、補給量、航路と移動経路の整備状況、移動する艦艇数(下記b項参照)
b)一般的な侵攻距離の例外。百隻以下なら少数部隊とみなし、侵攻距離の2から3倍ほど移動可能とします。
c)フォールド航行
フォールドとは、特殊燃料テルモナイトを用いて行う超空間宇宙航法です。フォールドすることにより、宇宙艦隊は最長33光年を1日で航行することができます。フォールド燃料は極めて貴重なので、軍の補給路、貿易航路をフォールド航法でつなぐのは現実的ではありません。艦隊が持つフォールド燃料は、最大でも数回分です。
d)太陽系への宇宙船の出入り
太陽系への出入りは、通常太陽系に接続する宇宙航路との位置関係で決定されます。航路はア)天頂型、すなわち恒星の極方向の延長線上に航路入口を持つ太陽系と、イ)外周型、すなわち太陽系の最遠軌道の外側に航路入り口を持つ太陽系に分かれます。一般に辺境の太陽系では外周型が、開発の進んだ太陽系では天頂型が多いです。
(2)宇宙戦闘
ここに掲げる設定は一般原則です。特に記述がない場合、リアクション中マスターは基準を尊重してマスタリングします。
a)戦闘艦艇の強弱
戦艦1隻は戦力の上で重巡4隻~10隻程度に匹敵します。重巡が戦艦を倒すには、至近距離まで迫って砲撃を長時間続けるしかありません。重巡1隻は軽巡2~4隻に匹敵します。巡洋艦の速度は軽巡、重巡ともほぼ等しいので、彼我の艦位によっては軽巡にも勝機があります。重巡、軽巡は駆逐艦4隻~10隻以上に匹敵します。一般的に、上位クラス艦が目標を有効射程に収めれば小型艦にビーム砲で致命的な打撃を与えられます。小型艦は至近距離に至近距離まで肉薄し、大型対艦誘導弾(ミサイル)で攻撃するのが唯一の戦術と考えてよいでしょう。肉薄攻撃の場合、小型艦は上位クラス艦に対し有利な戦闘比率(戦艦対重巡なら4隻、重巡対軽巡なら2隻、軽巡対駆逐艦なら4隻)で戦えますが、通常の艦隊戦闘では小型艦は不利な戦闘比率(戦艦対重巡なら10隻、重巡対軽巡なら4隻、重巡、軽巡対駆逐艦なら10隻以上)で戦わざるを得ません。
b)戦闘艦艇の機能
駆逐艦とは、惑星軌道上に1ヶ月以上とどまり、惑星地表面に艦砲射撃できる火力を持ち、また、人員を軌道上と地表感で往復させられる手段(シャトル等)を持つ最小規模の戦闘鑑定をいいます。このうち内惑星距離(数十億キロ)程度の航続力のものはフリゲートと称されます。運用の便のため、数隻を合して駆逐隊を編成します。駆逐艦は、駆逐隊単位で護衛、哨戒、大型艦または拠点襲撃、敵駆逐隊迎撃、小型艇迎撃、救難など様々な任務に用いられる多用途軍艦です。大型艦と違い艦内の雰囲気が自由で、若い艦長のもと乗組員に一体感がある少世帯なのが特徴と言えるでしょう。亜種としてライアー帝国は突撃艦を保有しています。駆逐艦より小型で防御をおろそかにしつつも、駆逐艦同様の攻撃力を持つ艦種です。
軽巡洋艦は、数隻で戦隊を組み、駆逐艦作戦の司令部の役割を果たします。通常、駆逐戦隊は複数で活動するので、軽巡洋艦も複数で行動します。駆逐艦にはない大型プローヴを持ち、数十光年の長距離に情報を送ることができます。また、艦内も広く休養、修理施設を持ちます。
重巡洋艦は、数隻で戦隊を組み、大型艦隊の一部を構成するのが一般的です。任務は、艦隊主力の前衛を務める、小型艦を撃破する、長い航続距離を活かし長距離に進出して敵の補給路を攻撃する、戦艦部隊の護衛を務めるなど様々な、軽巡と駆逐艦を火力で圧倒し、大型の戦艦には機動力で対抗できる強力な艦種です。艦によっては、艦長の上司の司令官が、司令部の参謀とともに乗り込みます。
戦術ミサイル巡洋艦は、数隻で戦隊を組み、大型艦隊の一部を構成するのが一般的です。任務は大型長距離ミサイルにより、拠点や惑星地表、敵艦隊に対し長距離攻撃を行い、それらを撃破することで大艦隊の行動支援を行うことです。反面ミサイル発射後の戦闘力は軽巡並みであり、艦隊の護衛を必要とします。
空母は、40~数百機の小型宇宙艇を搭載し、艦隊の近接戦闘や拠点攻撃を小型宇宙艇によって支援します役割を持ちます。空母は数隻で戦隊を組み、大型艦隊の一部を構成しますか、小型艦隊の支援に1隻つくのが一般的です。防御力はおおむね軽巡並であり、陣形の後方に位置することが多いです。
戦艦は2隻から4隻で戦隊を組み、大型艦隊の中核を構成します。その任務は、艦隊司令部が座乗し、全艦隊の頭脳になること(旗艦)、あるいは敵戦艦、巡洋艦の撃破です。また強力な火力に物を言わせ、戦艦のみで奇襲的に惑星を襲い砲撃することもあります。
c)支援艦艇の機能
機雷敷設艦は、大量の宇宙機雷を目標宙域に敷設し機雷原を形成する能力を持ちます。宇宙機雷は機動力を持ち、敵艦隊に突進します他陣形を変えることも可能であり、その制御も機雷敷設艦が行います。直接戦闘力は皆無です。
強襲揚陸艦は、1個大隊程度の海兵部隊を搭載し、敵拠点(コロニー、ステーション、惑星、小惑星など)に海兵部隊を降下させる役割を持ちます。海兵部隊支援のために軽巡並みの戦闘力と軽空母並みの小型宇宙艇搭載能力を持ちます。
補給艦は、大型艦隊の持続的補給を可能にします。1隻で小型艦隊(小型~中型艦艇混成十数隻ほど)の数カ月分の補給物資を搭載しています。戦闘力は皆無です。
工作艦は、大型艦隊に随伴します。工作艦1隻に付き重巡1隻/軽巡2隻/駆逐艦4隻の破損段階を1段階(中破なら小破へ、小破なら損害なしへ)回復することができます。戦艦は専用施設のある軍港で修理します必要があります。戦闘力は皆無です。
d)
小型宇宙艇は、惑星軌道上、小惑星帯と衛星軌道周辺、恒星系外では航路上の交差点などで闘うことを目的とする小型戦闘艇の部隊です。部隊は機種別に編成されます。機種は次のように大別されます。敵小型艇の破壊を任務とする宇宙戦闘機。宇宙船、ステーション攻撃用の対艦ミサイルを1発搭載する攻撃機。他の機種については20世紀の軍用機のものを連想してください。小型戦」闘艇は、外惑星系やディープスペース(恒星系外の深宇宙)での任務に適しません。こういった場面では、敵味方の宇宙船がかなり高速を出しているので、目標を補足し攻撃する機会がほとんどない上、出撃した小型艇の回収も困難なのです。対する惑星軌道周辺では、宇宙船が速度を出せず、また奇襲の機会も増します。このように、小型艇は局地戦、拠点戦闘のための兵種です。
e)索敵、偵察任務
超光速で移動する敵艦隊をディープスペースで直接補足することはできません。数十光年距離の遠方を移動する敵艦隊に関します情報収集は、哨戒艦艇より、外交官やエージェントの仕事です。宇宙艦隊の偵察は、太陽系の外、主に1光年未満の距離以内を覆域とします。最高で高速の70%ほどを発揮する宇宙軍艦も、艦隊を組み、隊形を維持するとなると高速の20%ほどが常識です。このため最遠方の哨戒ラインは、恒星系外ぎりぎりとなります。最新鋭の偵察通信用無人衛星プローブを組合わせても、恒星系外を完全にカバーするには、駆逐艦100隻を必要とします。このような哨戒ラインの展開にはまる1ヶ月がかかることも忘れてはなりません。恒星系外で敵の小さな拠点を発見するのは極めて混乱です。恒星系以外でも外惑星(木星から冥王星)はお互いの距離が遠いため、ほとんど絶海の孤島のようなものです。補給船が到着するにも数日から数週間かかるし、相互支援も不可能です。小惑星帯には、小艦隊なら1ヶ月以上息を潜めていることも不可能ではありません。仮に敵を発見しても、味方主力の到着まで1週間もかかるようでは、当然逃げられてしまいます。ただし通信やビーム、ミサイルの仕様など派手な動きは、各惑星や軍艦から用意に傍受できます。すなわち、外惑星系は「何かがいるとわかっていても、探り出すことは難しい宙域」と考えてほしいのです。数時間から数日前の情報を傍受しても、相手をうまく捕まえるのは至難の業です。敵が潜むのも、また偵察部隊が活躍するのも外惑星系です。内惑星系の特徴は、天体同士の距離がきわめて近いことにあります。最大の戦艦の主砲は、この時代地球から火星付近まで到達します。通信は1時間未満のタイムラグで可能です。火星にミサイル基地を作れば、地球や水星に惑星間戦略ミサイルを発射することも可能です。とりわけ、惑星の衛星軌道に築かれる大型要塞は、例えば金星、地球、火星と云った惑星の要塞同士で交互に支援射撃できる態勢を取るのが常識です。この防御はきわめて強力であり、戦績単位の大艦隊で攻略する必要があります。至近距離に近寄ってきた敵は、惑星の裏側に隠れるのを常とします。距離の近い内惑星同士では、プローヴは敵に撃墜されやすいので、有人偵察機がここで出番となります。また、いわゆる電波によるレーダーが有効に働くのも内惑星系においてです。
f)交戦距離
最大の要塞砲の射程は6000万キロ程度。これは地球と火星が最も接近した時の距離に近いです。戦艦の射程は最大1000万キロです。有効射程とは、敵の妨害を受けずに目標に射弾の半数が命中しうる距離を言います。彼我の艦の性能、電波状態によりこれは変動します。
巡洋艦クラスの有効射程は200万キロ。軽巡で100万キロ。駆逐艦は20万キロ以内。複雑に移動する目標、特に高速の軍艦やミサイルに対しては有効射程の百分の一ほどの距離でないと命中を期待できません。
天体間距離表
太陽・地球間 14,950万km
太陽・火星間 22,780万km
地球・月間 38万km
g)ビーム砲のパワー充填
近地球圏大戦の後、3900年代になって大型艦の主砲に出力ブースターを装備するのが一般的になりました。出力ブースターとは一種の火力増大装置で、艦のエネルギーを主砲のために何時間分も蓄積しておく充填部と、高出力を発揮させる増幅部からなります。これにより、主砲の発射前に使用するエネルギーを節約しておけば、敵大型艦との砲戦時に普段より強力な破壊力を一定回数持続的に発揮できるようになったのです。ブースターは各国の重巡以上が装備しています。
節約の主な方法は、主砲から掃射砲まであらゆる備砲を使用しないことが第一。第二に、激しい使用をしない。第三にフォールドの前後3時間を経過していることです。
(3)3900年代の軍事常識
a)一般的編成
NF57、ライアーの艦隊編成の違いを以下に述べます。
NF57軍の最小単位は駆逐隊です。駆逐隊は駆逐艦数隻からなります。これを複数束ね、指揮と先導のため軽巡が加わると駆逐戦隊になります。重巡は数隻単位で重巡戦隊を形成します。数個駆逐戦隊と1個重巡戦隊、その他支援艦艇などにより、機動群(約50~100隻前後)が編成されます。NF57軍の基本的作戦単位は機動群です。数個機動群と戦艦戦隊によって、機動艦隊が編成されます。数個~十数個機動艦隊によって艦隊が編成されます。
ライアーの場合、機動群に海兵部隊を随伴させ、「師団」を編成します。これはライアー軍が迅速な敵地占領を目的とした侵略的軍隊ということを示しています。数個師団と戦艦戦隊で軍団が編成されます。数個~十数個軍団によって軍~群集団が編成されます。
しかし、アレイダでは艦隊、軍集団どころか機動艦隊、軍団ですら活動の基本単位ではありません。作戦の基本単位は機動群、師団以下の部隊です。
アレイダでも事情は基本的には同じです、機動群以上の部隊を一気に「艦隊」と呼ぶことが多いです。アレイダ諸国は小国が多く軍備も小さいため、NF57式の機動艦隊や艦隊を編成することができないからです。
b)一般的行軍手順
NF57、ライアー艦隊は常に機動力を重視します。補給部隊も機動力と防御力、交戦能力を重視した編成を特徴とします。部隊は軌道艦隊、または機動群(ライアーにおいては軍団、師団レベル)ごとに行軍します。各グループ間の距離は1から数光年です。各グループの機動と戦闘は、作戦方針の範囲で現地指揮官の権限に委ねられます。
c)戦闘隊形
楔形隊形が一般的です。この隊形では、火力のある大型艦が前方に展開します。側方から後方にかけて小型艦、火力の低い艦が展開します。空母、戦闘補給艦艇と支援艦艇は楔の内側に位置します。楔形隊形は、敵の艦隊突破、拠点襲撃、転進機動と様々な作戦運動に適しています。特に補給部隊を伴うため長距離の機動に向きます。ほかに、小部隊の隊形として縦列隊形があります。この隊形は少数艦隊の迅速な機動に向いています。機動群(ライアーでは師団)以下の編成単位で多用され、太陽系内では一般的な隊形です。
d)休養と補給手順
被害を受けた部隊は、後退部隊の到着後後方に下がって休養再編成します。後退部隊がない場合、部隊は前線に展開したまま補充艦を受け取ります。後退できない場合の修理は、艦隊に随伴する大型艦隊工作艦が行います。
e)索敵、偵察任務
索敵と偵察は、戦闘の初動において最も重要とされます。通常、重巡を中心とした打撃力のある部隊が偵察任務に就きます。偵察部隊の第一の任務は、敵偵察部隊の撃破、可能なら目標地域の占領です。そして、自軍に有利な状況を生み出し敵に決戦を強いるのが眼目です。偵察部隊は、機会を見て敵の撃破に努め、また優勢な敵と遭遇した場合は味方主力部隊の迅速な誘導に務めます。迅速な決戦への展開が重要視されています。この方針に従い、主力は偵察部隊のプローヴ通報に従い敵位置に急行します。見敵必殺の精神がNF67、ライアー艦隊の伝統です。
f)長距離行動作戦
長距離行動は、宇宙艦隊の基本的な原則までに高められています。NF57、ライアーは、作戦距離30光年以上の距離における艦隊作戦を長距離戦と位置づけ、専門の司令部を設置しています。機動艦隊(ライアーでは軍団)の指揮下、長距離戦部隊司令部が置かれています。この司令部は長距離戦により敵の補給、展開を妨害し戦力を減殺することを目的とした作戦を実施します。部隊に配属されるのは航続力の長い艦艇そして仮装巡洋艦、長距離襲撃艦です。作戦期間は長期に及び、半年以上ということも珍しくないでしょう。
g)拠点防衛作戦
拠点防衛の主力は、防御力を重視した中小艦艇と、海兵部隊などの降下部隊です。前者は味方主力艦隊の来援まで制宙権を敵に渡さないよう作戦し、後者は惑星、ステーション、小惑星なその拠点を直接確保して抵抗します。部隊の主な装備は基地攻撃機、砲台、機雷など。アレイダ諸国、特にニブノス連邦軍はこれを得意とします。
【異能者について】
ライアー帝国の異能者研究機関と特殊部隊
ライアー帝国においては、連合条約が遺伝子平準化法で定めた規範から外れる亜人類の研究や戦力化に消極的な――場合によっては違法ともなるNF57星系と異なり、実力主義・軍国主義の立場から、亜人類の研究並びに戦力化が進んでいます。ライアー帝国においてもNF57同様亜人類差別は存在しますが、それは戦場で武勲を上げ、実力を見せつけることで克服しうるものです。全体に、亜人類に対しライアー帝国はNF57星系より高待遇を与えていますが、それはあくまで戦争の道具としてです。
ライアー帝国において、戦争の道具として、亜人類を研究・運用する機関は以下のとおりです。これら機関は亜人類の能力開発のためにNF57であれば非合法とされるであろう非人道的処置や実験、洗脳などを施しています。戦力化された亜人類は、それぞれ中隊戦闘団規模の分遣隊に編成されています。
ウロボロス機関(特殊研究組織1001)
親衛隊中央科学局傘下のサイキック研究並びに戦力化模索のための機関です。本部として大規模な研究施設を首都セルゲンブフトに置き、サイキックの能力開発として投薬・大脳辺縁系手術・マインドゲーム(サイキック間の相互理解と模擬戦を兼ねる訓練)など様々な手段を用います。これにより、サイキックとして安定した能力と忠誠心を併せ持つサイキックゾルダート(異能者兵士)を創造することが、ウロボロス機関の最終目的ですが、現在はまだ途上にあり、戦力化可能なサイキックゾルダート1名に対し、数名のサイキックが何らかの形でリタイアします。その中には廃人化するものも存在します。
ウロボロス機関はサイキックゾルダートによる中隊戦闘団レベルの分遣隊を数個保有しています。これらサイキックゾルダートは脳量子通信によるテレパシーでクラウド化された集団意識を持っており、一糸乱れぬ連携行動を可能とし、極めて強靭な統制力を極限状況下でも発揮します。反面身体能力は弱く、パワードスーツなど強化装備なしでは軽歩兵部隊と変わりありません。
現在、ウロボロス機関はD分遣隊をフォルク・レーテ要塞に派遣し、即時待機状態においています。
ケルベロス機関(特殊研究組織1052)
親衛隊中央科学局傘下のミュータント研究並びに戦力化模索のための機関です。本部として大規模な研究施設をノイシュタット太陽系に置き、ミュータントの能力開発として生体的人体強化、すなわち投薬・遺伝子操作・広範な大脳神経系改造・特殊運動訓練など様々な手段を用います。これにより、ミュータントとして安定した能力と忠誠心を併せ持つミュータントゾルダート(変異種兵士)を創造することが、ケルベロス機関の最終目的ですが、競争関係にあるウロボロス機関に1歩先んじており、戦力化可能な被験体の割合は全被検体の約半数に達しています。
ケルベロス機関はミュータントゾルダートによる中隊戦闘団レベルの分遣隊を十数個保有しています。これらミュータントゾルダートの個体戦闘力はパワードスーツ装備の重歩兵に匹敵あるいは凌駕し、特に近接戦闘で猛威を振るいますが、士気統制の面では本来通常の歩兵部隊に近しいレベルでしかありません。これを強化するため、神経ステープラーによる狂化兵(ベルゼルク)モードが緊急モードとして設定されています。狂化兵は極めて高い士気を誇りますが、目前の敵を撃滅することのみに行動を特化され、理性を欠いた状態に陥り、すべての敵を殲滅するか自身が死亡するまで戦闘を続行します。狂化兵モードを解除する権限を持つのは指揮官だけです。
現在、ケルベロス機関はK分遣隊をフォルク・レーテ要塞に派遣し、即時待機状態においています。
これら機関によって養成された兵士や、NF57ではやはり異端の存在とされるサイバネティクス(機甲士)を編合し、1つの部隊として統合運用可能にした部隊が、武装親衛隊には存在します。
SS国際義勇兵旅団エデュアルト・フォン・シークネン
武装親衛隊の国際義勇兵部隊――すなわち外人部隊です。NF57星系やアレイダ自由圏、フライラント自由圏、アウターワルーンなどから亡命または徴集されてきたサイキック、ミュータント、サイバネティクスをまとめ上げて編成された特殊部隊で、数多くの戦闘に参加、87年戦役ではファントップ戦線のシャフハウゼン~ヴァイスホルン~ブルツ撤退戦における焦土作戦で悪名を轟かせ、98年紛争ではアークラント(フォルコウ)方面に投入され猛威を振るい、その後本国の内戦鎮圧「アウグストゥス」作戦において重要な役割を果たすなど、功罪共に大きな部隊として、親衛隊内関係者の間では別称「ヴェアヴォルフ(人狼)」と、畏敬の念を込めて呼ばれています。
現在、当部隊は中隊戦闘団規模の小部隊に分割され、アレイダ方面商船隊との合同作戦により、傭兵部隊に改変されて活動しています。
【その他について】
ジェーン条約
NF57諸国及びライアー帝国は、国際連合条約が定めたジェーン条約の批准を行っています。ジェーン条約は地球型惑星・コロニー・アステロイドなど、非武装人口居住域に対する大質量爆撃及びNBC兵器の使用を禁じる条項と、戦争捕虜や民間人に対する人権保護条項、戦災地域復興義務を定めた復興条項、違反者に対する罰則を取り決めた罰則条項、それぞれの行為が罰則に値するか判断するため裁判を行うことを定めた裁判条項から成り立っています。
ジェーン条約はCY3900年代の戦争文化においては基本的な価値観とされており、大規模質量弾(アステロイドなど)による惑星爆撃やNBC攻撃は、他国から最大級の非難を受ける他、自国内部でも反対される可能性が極めて高いものとなっており、捕虜や民間人の人権は制限付きとはいえ認められています。そしてジェーン条約違反の大量殺戮や戦争捕虜・民間人虐待については、国際連合条約が設置した国際裁判所、あるいは国内の軍事裁判所による比較的公正かつ厳粛な裁判が行われ、違反の度合いに応じた刑罰が処されます。
キャバリアーの詳細
キャバリアーとは、全高数十m、重量数千tに及ぶ巨大な人形兵器です。大別して、オリジナルキャバリアーと量産型キャバリアーに分類されます。
オリジナルキャバリアーとは、近地球圏大戦以前に製造された、現在では遺失技術(ロストテクノロジー)とされる高度技術の産物です。大出力のビーム砲や長距離対艦ミサイル、対小型機用マイクロミサイル、エネルギーソードなど多様な武装を装備可能でありつつ、それに対して偏向フィールドなどのエネルギーシールドを展開可能であり、その攻撃力は1機でフリゲートと互角とされています。
また、オリジナルキャバリアーは通常の宇宙戦闘機を遥かに凌駕する戦闘機動性を持ちつつ、極めて精密な重力圏下でのフォールド機能を持ち、戦術的機動性が極めて高い存在です。ロストテクノロジーであるアンチフォールドフィールドに阻害されない限り、キャバリアーはいかなる地点に対しても――例えば戦艦の液体水素タンクの中にすら――準備なしにフォールドが可能です。消費テルモナイトは少なく、1回の補給で数回のフォールドを実行可能です。
このように、多彩かつ強力な武装と、戦闘及び戦術機動性の高さから、個人戦闘兵器としては宇宙最強の地位を占めるオリジナルキャバリアーですが、整備性は極めて低く、ロストテクノロジーに熟達した技術者のもと、十分な整備施設――近地球圏大戦前の遺跡など――で整備されない限り、すぐに行動不能となります。
量産型キャバリアーとは、オリジナルキャバリアーを解析し、現在の技術でリバースエンジニアリングを行って作り上げられた、オリジナルキャバリアーのモンキーモデルです。特にエンジン出力及びフォールド機関においてオリジナルキャバリアーに対する劣位は顕著です。
その結果、量産型キャバリアーの戦闘力はオリジナルキャバリアーの数分の1です。また、防御力もロストテクノロジー由来素材や偏向フィールドなどを用い得ないため、その分低くなっています。それでもなお、量産型キャバリアーは、数機でフリゲート1隻に痛撃を与える攻撃力と、通常の宇宙戦闘機を凌駕する戦闘機動性、限定的系内フォールドによる戦術機動性の高さを獲得しています。限定的系内フォールドとは、誤差数千kmの範囲での比較的精密なマイクロフォールドを、2回だけ行える能力であり、これによるヒットアンドアウェイ戦術は通常の宇宙艦隊にとっては非常に厄介なものとなります。
量産型キャバリアーはロストテクノロジーに熟達した技術者と専用の施設が揃っていれば整備可能です。ただ、航空機などに対して割高であり、地上で用いるにはいささか費用対効果が悪いため、主に艦隊中枢への奇襲攻撃兵器としての運用が考えられています。
量産型キャバリアーのパテントはメネディア国籍のフォーチュン・マキシマ社及びその資本提携先のアラコス重工、ディルコス重工が保有しています。フォーチュン・マキシマ社はブレドム、ニブノス、メネディアといったアレイダの大国に量産型キャバリアーを売りつけ、改良のためのデータ採集を行っています。
ブレドム、ニブノス、メネディア軍は、量産型キャバリアーを現在品定めしている状況で、各自評価試験隊として1個中隊(16機)を編成していますが、使えると判断した場合追加発注を行うとみなされています。なお、NF57諸国は量産型キャバリアーの運用・技術データをアレイダ諸国にやらせて、自国ではそれを参考にしたより強力な量産型キャバリアーを開発する予定です。
なお、ライアー帝国軍はD軍集団第23軍「ゲルテル戦隊」所属マクシミリアン機関が独自にキャバリアーの研究開発を進めています。その実態は現在のところ不明ですが、恐らくは産業スパイが盗み出したフォーチュン・マキシマ社の技術と、国内のオリジナルキャバリアー解析技術との混交によるものと推定されます。