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トライブ事変
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▼白の事変
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その日、異端教会フランス本部から、東京支部に一つの電話が入った。
「白の魔女よ、凶報だ。【ルー・ガルー】が復活した」
その言葉を聞いた祈は、受話器を手に表情を強張らせた。
かすれた声で、電話の向こうの魔術師に問いを返す。
「それは確かですか。前回の出現から20年も経っていないはずですが」
『確かだ。魔術師にのみ聞こえる咆哮。満月の夜に頻発する殺人事件。全てが彼奴の存在を示唆している』
黙り込む祈に、電話の向こうの【神罰の魔女】が言う。
「知っての通り、ルー・ガルーの討伐は、代々白の魔女の役目だ。
とはいえ東京でも緊迫した情勢が続く今、白の魔女をこちらに呼び寄せるのは気が咎める。
こちらで対応しても良いが……どうする?」
その問いに祈は、しばし沈黙する。
祈は知っている。本部もまたある意味では東京以上に、緊迫した状況に置かれている事を。
欧州在住の魔術師たちを討伐に向ければ、本部の守りが手薄になる。それは白全体にとって危険な事だ。
祈は傍にいた衛示と視線を交わし、肯定の意を見て取ると、受話器に向けて答えた。
「……いいえ、私が行きます。白の魔女の使命として」
「宜しい。では伝統に乗っ取り、信頼する魔術師を連れて来てくれ。
往復の足は本部が用意し、援護要員も派遣する。18時間後、彼の地で逢おう」
▼
同日・夕暮れ。祈は拠点に集まった白の魔術師たちに告げた。
「皆さん、急な話で申し訳ありません。
これより異端教会本部のある、フランスに同行して頂けませんか?」
その言葉にざわめきが起きた。『なぜ?』と問う魔術師に祈が説明する。
「かつてフランス全土を恐怖に陥れた、ルー・ガルーという知的個体が出現したんです。
この個体と当教会は、過去5度に渡る死闘を繰り返しています」
祈が言うには、ルー・ガルーという知的個体は、倒しても100年ほどの間を置いてから
復活するという性質があるらしい。
「1597年に、初代白の魔女トリスタニア・アルブス様が討伐した後も、
たびたび蘇るルー・ガルーを倒すのは、代々の白の魔女の役目でした。
より正確に言うと、白の魔女と信頼する仲間たち――つまり私と皆さんの事です」
むろん祈一人で行く事もできる。だができれば皆も一緒に戦って欲しいらしい。
その戦いを通じて得られるものは、必ずこの先の役に立つとの事だ。
そう告げる彼女に白の魔術師が問う。『それで、そいつはどこにいるのか?』と。
祈はその問いに迷いなく答えた。
「本部の魔術師が目標の足取りを追い、捕捉した地点で結界を張っています。
場所はフランス・パリ近郊に位置する『銀の森』――
白の故郷と呼ばれる場所。そこが決戦の地となります」
その言葉に白の仲間たちが、さっそく身支度を始める。
そして因縁の敵に挑むため、祈と共に歩き出した。
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▼黒の事変
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同日。黒でも事件が起きていた。
ニナが執務室で書類仕事に取り組んでいると、不意に扉が開いたのだ。
「何だ? 誰も通すなと言ったはずだ――」
そう言いかけ、ニナは息を飲む。
部屋に入ってきたその男は、ニナの良く知る者だった。
見た目の年は20代後半か。金髪碧眼の整った顔に、優しげな笑みを浮かべている。
だがその表情と裏腹に、瞳の奥には底知れぬ暗黒が宿り、身には黒の魔力が満ちていた。
ニナは信じられぬ思いで声を上げる。
「総帥、いらしたのですか!?」
「おぉ、ニナ。愛らしき小さな魔女よ」
総帥と呼ばれた男は、そう言ってニナを抱きしめた。
▼
――ヨハン・シュバルツイェーガー。
【黒の総帥】と呼ばれる魔術師にして、黒のトライブの頂点に立つ指導者。
これまで決して本国を動かなかったその男が、今なぜか日本にいる。
訳も判らず接待するニナに、総帥は来日の理由を語った。
「一つはこれまでろくに本国からの支援も受けず、孤軍にて幾度とない危機を乗り越えてきてくれた
極東の同胞たちへの挨拶とねぎらいだ。だが無論それだけではない」
「と、申しますと……」
「長らく空席になっていた『黒の魔人』を、新たに決めに来たのだよ。日本支部の魔術師の中からね」
その言葉にニナは目を見開く。
「総帥直々に、お選び頂けるという事でしょうか? 私の部下たちの中から」
「そうとも。充分にその任に足る者が、東京には幾人もいると聞く。
かのナハトブーフを討伐した者もいるのだ。なんら不思議はないだろう?」
「しかしそれぞれ能力と経験は傑出していても、第二覚醒を遂げた者は1人しかいません。
またその魔術師は、黒の魔人になるには不適格かと愚考します。
故に現状では私の部下の中から、『黒の魔人』を選出するのは難しいかと」
「普通ならばね。だが不可能を可能とする術も、イェーガーの歴史の中にはある」
総帥はそう言い、黒霧を発した。
すると胸の辺りからずるりと、血染めの羊皮紙が現れる。
「おまえも初めて見るだろう?
初代黒の魔人アドルフ・メフィストの遺物、【フェアトラーク】だ。
これを身に取り込んだ黒の魔術師は、第二の悲劇を経なくとも、魔人となれる」
それは黒にとって、極めて貴重な遺物だった。
だが東京の同胞の働きに報いるならば、これを与えるのもやぶさかではない。
総帥はニナにそう続ける。
「ニナ、部下たちに伝えたまえ。これより黒の魔人の選考を始めると。
条件は黒の魔術師である事、男性である事、黒らしくある事。その他には特にない。
魔人になる事を望む者は、その意志と力を示しなさい。
いかなる方法でも構わない。他トライブの幹部と戦うもよし。私に直接挑むもよし。
それを見て私が、独断と偏見により命名する。
『我こそは黒の魔人なり』と思う者は、その意志を行動で示すのだ」
総帥の言葉に、ニナは「はっ!」と鋭く答えた。
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▼赤の事変
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同日。赤でもまた、事件が起きていた。
赤の魔女エスティ・ラプラスが、同僚たちを集めてこう告げたのだ。
「……ずっと考えてたのよね。魔女の力を失ったあたしが、赤の魔女を続けてていいのかって。
もちろん降りるって考えもあった。だけど諸般の事情でそれも難しい。
だから、試してみようと思うの……もう一度、あたしが魔力を取り戻す為の実験を」
その言葉に赤の魔術師の半数が驚き、半数は好奇心に目を輝かせた。
ラプラスはその反応を予期していたかのように続ける。
「面白そうって顔をしてる子もいるわね。でもこれはもちろん、成功例のない実験よ。
渡米中に何度も試したんだけどね。普通の人間を魔術師にする事はできたけど、
あたしが魔力を取り戻す実験は、ただの一度も成功してない。
何かが足りないの。でもその何かを埋める事ができたら……
ウィザーズインクは、魔術の真理に一歩近づく事ができるかもしれない。
お願い皆。この前人未到の実験に、力を貸してくれない?」
その言葉に興味を持った者もいたようだった。
純粋な好奇心か。ラプラスへの思慕や友情か。あるいは赤の戦力強化という実利的な理由か。
動機は様々だとしても、それぞれ身を乗り出した魔術師たちに、ラプラスは微笑んで言う。
「いいねぇ、ホントあんたたちが同僚で嬉しいわ。
よし、それじゃ行きましょうか! 実験は設備が一番揃ってる所で行うわ!
アメリカ・ネバダ州の、ウィザーズインク本部研究所。
現場で鍛え上げてきた日本の魔術師たちが、赤の中枢に乗り込むわよ!」
――そうして白・黒・赤のそれぞれにとって、重要な一日が始まる。
▼行動選択肢
①ルー・ガルー討伐に参戦する
②次期黒の魔人の選考に参加する
③ラプラスの実験に協力する
④その他
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調停者編5で、一時的和平が結ばれていた場合、派生していたシナリオの1つです。
闘争が少なかった分、各トライブのパワーアップをさせる為のシナリオ。
また未回収の伏線回収や、各トライブの本部の魔術師との交流をテーマにしていました。