![](https://static.wixstatic.com/media/554f04_44ac6401559546e186424aade3cd9995.jpg/v1/fill/w_653,h_47,al_c,q_80,enc_avif,quality_auto/554f04_44ac6401559546e186424aade3cd9995.jpg)
![](https://static.wixstatic.com/media/554f04_0799a25ccc764fb6b5e4b677b39a5e16.jpg/v1/fill/w_661,h_201,al_c,q_80,usm_0.66_1.00_0.01,enc_avif,quality_auto/554f04_0799a25ccc764fb6b5e4b677b39a5e16.jpg)
【特別篇】青の魔術師
▼
ある夜、街の片隅の廃ビルの一室。
そこでは10人ほどの黒の魔術師たちが、全身に傷を負い、倒れていた。
そこに穏やかな声が浴びせられる。
「おやおや、黒の魔術師とやらもこんなものか。少し拍子抜けだね」
そう言ったのは、長身痩躯の青年だった。
長い銀髪に銀縁眼鏡。濃紺のマントを羽織り、薄笑いを浮かべている。
この青年は会合の場に現れるなり、問答無用で魔術師たちを叩きのめしたのだ。
やがて倒れていた魔術師の一人が、ふらつく足取りで立ち上がる。
「き、貴様、何者だ……!」
この場に集まっていたのは、決して雑魚ではない。長年黒に所属している、古参の魔術師たちだ。
だが彼らの黒霧や銃は、男にはまるで通用しなかった。
「我らの捉え損ねた在野の魔術師か……それとも白や赤の隠し玉か!?」
そう問う魔術師に、青年が肩をすくめる。
「白? 赤? 僕らはそんなものじゃないよ。もちろん黒でもない」
青年はそう言って、魔術師に歩み寄る。どこか空虚な笑みを浮かべて続ける。
「遅ればせながら自己紹介しよう。
僕の名前は、オーキッド・ソロモン。
――青の魔術師さ」
▼
「青の魔術師が出たですって!?」
それから数時間後。3トライブ共同の集会所となった新宿拠点にて。
祈はニナの報告を聞くなり、驚きの声を上げていた。
ニナは重く頷き、答える。
「ああ。うちの古参魔術師が使っていた集会場が、何者かに襲撃された。
全員命に別状はないが、ずっと気絶したままで、うわごとを繰り返している。
その内容が、『青の魔術師にやられた』というのものなのだ」
ニナの言葉にラプラスが「青の魔術師って? そんなのいるの?」と尋ねる。
祈とニナは何か知っているようだが、ラプラスは聞いた事もない単語だった。祈が頷いて説明する。
「結論から言うと、青の魔術師は存在します。いえ、『していた』というべきでしょうか……」
「過去形? 今はいないって事?」
「ええ。今から450余年前、異端教会始祖レオン・アーデルハイム様は、新魔術体系を構築しました。
それを元に現在のような白・黒・赤の魔術分類が為され、それまで西洋で広まっていた
旧式の魔術は消えて行ったと……
その旧い魔術師たちを、私たちは便宜上『青の魔術師』と呼んでいたのです」
青とは黎明の空の色。『暁の書』が書かれる前の魔術師の色を指すという。
「ちょい待ってよ祈? 赤には伝わっていないんだけどその話」
「赤でもアルバートさんなど、古参の方ならご存知のはずです。
しかし重要ではないと考え、若い皆さんには伝えなかったのでしょう。
なぜなら青の魔術師は、白・黒・赤の魔術師と比べて、遥かに力が低かったから。
そして以後数百年にも亘り、姿を現さなかったからです」
「じゃあなに? その青の魔術師とやらが、数百年かけて力を蓄えて、
今さらあたしたちの前に姿を現したっていうの?」
ラプラスがそう言った時、不意に『ガシャン!』と、ガラスが割れる音が響いた。
振り返ると、ヒキガエルが窓を破り、部屋の中に入ってくる姿が見える。
「カエル……? なんでこんなとこに、っていうか窓を破るって――」
ラプラスが眉を潜めつつ、カエルに歩み寄る。
見ればそのカエルは、口に何か手紙らしきものを咥えていた。
それを開くと、手紙には以下の文章がしたためられていた。
-------------------------------------------------------------------------
『はじめまして魔女の皆さま。
黒の方々へのご挨拶、お早くお耳に届きましたようで、まずは重畳と存じます。
そう、我々は青の魔術師。歴史に埋もれていった古き魔法使いです。
白・黒・赤の皆様におかれましては、ますますご清栄の限り。
しかし我らもこのまま忘れさられるのは、少しばかり寂しくあります。
そこで一つ、我らの力試しにおつきあいいただけませんか?
これより我らは、3つのトライブに戦いを挑みます。
弱き魔術師たちには用はございません。我らは狙うは、たった4名。
高天原衛示様と祈様、ニナ・ファウスト様、エスティ・ラプラス様です。
この4人のお命を頂戴しましてから、我ら青の魔術師は、再び歴史の闇に帰ります。
それまでしばしお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。
青の魔術師 オーキッド・ソロモン』
-------------------------------------------------------------------------
――ラプラスたちが手紙を読み終えると、ヒキガエルは青い炎に包まれて消えた。
どうやら魔術……それも、白黒赤のどれとも微妙に違う魔術のように見えた。
ラプラスが薄気味悪そうに呟く。
「トライブの事も、幹部の名前も知っているの……? しかも狙いは幹部のみって!?
祈にニナ、奴らの能力はなんなの?」
「私たちにもわかりません。記録が古すぎて、全くあてにならないのです」
「黒も同様だ。調べる必要があるな……能力だけではない、こいつらの背景や思惑も。
この3トライブが共闘している状況で、各幹部を皆殺しにするというのだ。生半可な敵ではあるまい」
その言葉にラプラスが固く頷いた。
和平を迎えてから、初めての本格的共同作戦となるだろう。
「しゃーないわね……和平直後で微妙な時期だし、変な事件はとっとと終わらせるわよ。
3トライブの全力注いで、青の魔術師とやらを捕らえよう!」
▼
行動選択肢
①青の魔術師を捜索する
②青の魔術師の背景を調査する
③青の魔法自体の調査をする
④その他
![](https://static.wixstatic.com/media/554f04_678078d8efde4d96839c39099f36ea5e.jpg/v1/fill/w_661,h_53,al_c,q_80,usm_0.66_1.00_0.01,enc_avif,quality_auto/554f04_678078d8efde4d96839c39099f36ea5e.jpg)
調停者編5話で、一時的和平が結ばれていた場合、派生していたシナリオです。
早々に和平に至ってしまう為、バトル系の話を増やす為と、伏線回収等を行う為。
また闘争が少なかった分、各トライブのパワーアップをさせる為のシナリオです。
青の魔粒子が存在するかはどうかは、皆さんのご想像にお任せいたします。