
EXTRA:特集企画
<制作スタッフ インタビュー>
――風雅マスターがPBWのゲームマスターを始められた経緯をお聞かせください。
風雅 自分は大学生のころにTRPG(テーブルトークRPG)のサークルに所属していたのですが、そこでPBWの存在を知りました。PBWやPBMが原作のTRPGに触れたり、PBWをプレイされていた先輩からプレイの様子をうかがったことで、PBWに興味を持つようになり、実際に自分でもPBWをプレイするようになりました。
プレイヤーとしてPBWを楽しんでいるうちに、元々シナリオライターを志望していたこともあり、ゲームマスターをやってみたいと思うようになりました。
月島 風雅マスターはプレイヤーとしての経験がおありなので、プレイヤーの気持ちに寄り添うことができるマスターさんだと思います。
風雅 そうおっしゃっていだたけると嬉しいです。自分がプレイヤーとしてPBWを楽しんだ経験を、自分のシナリオをプレイしてくださる皆様にも体験していただければと常に思いながら、マスタリングさせていただいています。
――プレイヤーとしてPBWを遊ばれていた頃はどんなプレイをされていたのでしょうか?
風雅 どちらかというと一人でシナリオに積極的に参加するというよりも、他のプレイヤーさんとの交流を楽しんでいました。PBWの話題はもちろん、仲良くなったプレイヤーさんとはチャットなどで雑談したり、お互いにイラストを見せ合ったりと、貴重な経験ができたと思います。
仲良くなったプレイヤーさんと相談して一緒にシナリオに参加したこともありますが、自分たちが思ってもいなかったような活躍をマスターさんに描いてもらった時は本当に嬉しかったですね。
――風雅マスターは月島さんが原作を担当されたPBW『クロストライブ』でゲームマスターを担当されていますが、『クロストライブ』に参加された経緯についてお聞かせください。
風雅 『クロストライブ』にはネットのマスター募集を見て、参加させていただきました。当時の自分が知る限りでは、PBWで現代を舞台にした異能バトルを主軸にした作品というものは珍しかったこともあり、募集を見てすぐに応募を決めたことを覚えています。
――『クロストライブ』の世界観に魅力を感じられたのですね。
風雅 そうですね。世界観に関しては、プレイヤー対プレイヤーの構図を最初から打ち出していたことに衝撃を受けました。自分が知っているPBWはプレイヤー同士が協力して強大な敵NPCに立ち向かったり、世界の謎に挑んで行くようなものばかりでしたので、プレイヤーたちが三つ巴になって争う設定(注1)は斬新でした。
月島 最初から対立の構図を明確に打ち出すというプランは、プロデューサーの雑賀寛さんのアイデアですね。私は当時、まだまだPBWについて知らないことが多く、設定を作る際に雑賀さんに相談したところ、雑賀さんが「PBM(PBW)の醍醐味の一つは対立の構図にある」というお話をされていて、そこから着想を得ました。
でも、その後、いろいろとPBWについて研究を続けて行くうちに、風雅マスターがおっしゃっていたように、プレイヤー同士の対立を明確に提示しているPBWはほとんどないと知りました(笑)。
――前回のインタビューで月島さんがお話されていたように『クレギオン』をはじめ、過去のPBMでは対立の構図も重視されていましたよね。
月島 ええ。そういう意味では、当時の私が想定していた以上に『クロストライブ』は原点に回帰していたような作品になっていたと思います。
風雅 自分も過去のPBMについては詳しく知らなかったので、対立の構図は目新しいものとして感じていましたが、今になって思えば、『クロストライブ』は原点に回帰していたからこそ、過去のPBMを知らない新しいプレイヤーにとって、新鮮なものとなっていたのではないでしょうか。
――月島さんは『クロストライブ』で対立の構図を表現するにあたって、どんなことに留意されていたのでしょうか?
月島 一番大事にしていたのは「プレイヤーがどんなタイプのキャラを作っても活躍できるようにする」ということでした。所属している組織の在り方で、自然と対立の構図が生まれるようにしながら、組織内での協力や、組織を越えた枠組みでの協力もできるようにしました。
それと同時にリアリティにもこだわりました。現代社会に異能者たちが実際に存在するとして、「彼らはどんな生活をしているのか?」、「社会における彼らの位置づけは?」、「組織の資金源は?」など、詳細な設定は事前に作っていました。
ある程度のリアリティを担保しながら、そこにケレン味を加えていくことで、『クロストライブ』の世界を構築しましたが、これは『クレギオン』が長年かけてやり続けてきたことでもあるんですよね。
――風雅マスターは『クロストライブ』でマスタリングをされていた当時、どんな想いでマスタリングされていたのでしょうか?
風雅 プレイヤーの想いを大事にしようと心がけていました。『クロストライブ』はそこまで大規模なゲームではなかったので、マスターとプレイヤーの距離も近く、独特な雰囲気を持った作品でした。
マスターが作品以外でプレイヤーに直接、接触することはありませんでしたが、プレイヤーのコミュニティで、自分や久潟椎奈マスター(注2)のシナリオについて感想が書かれているのを目にしたりと、プレイヤーの皆様の想いを感じやすかったのも、あの独特な雰囲気が生まれるきっかけになっていたかもしれません。
月島 そうですね。特に風雅マスターはそれぞれのプレイヤーに対して、その行動を深く理解されて、適格に描写されている印象がありました。
風雅 リアクションに厳しい規定がなかったので、各プレイヤーの行動を丁寧に描写しようとするあまり、一本のリアクションが長くなりすぎてしまっていたという反省はあります(笑)。
――前回のインタビューで月島さんがしばらく現場を離れているうちに「どんでもないことがおきていまして……」(注3)とお話されていましたが……。
風雅 その件に関しましては大変申し訳ありません。
月島 いえいえ、むしろ私も想定していなかった面白い展開になっていたので、逆に嬉しかったです(笑)。
風雅 そうおっしゃっていただけると助かります。
――かなり重要なNPCが死亡していたんですよね。
月島 はい。風雅マスターのシナリオで赤のトライブという組織のNPCであるマクスウェルというキャラが死亡していました。
風雅 プレイヤーたちの行動を実現させていったら、敵対NPCの行動が噛み合ってしまい、死亡させるしかなかったんですよね。運営側としては、キャラクターのイラストもあって、ボイスもついているキャラなので死亡するのは痛い部分もあったかもしれませんが……。
月島 私は風雅マスターのマスタリングは間違っていないと思いますし、むしろすごく良いマスタリングをしていただいたと思っています。運営にとってどれだけ都合が悪かろうと、「プレイヤーの行動に妥当性があって、実現性があれば実現させる」という風雅マスターの想いはプレイヤーの皆様に伝わったと思いますし、私も風雅マスターの『クロストライブ』にかける想いを感じました。
――風雅マスターは『クレギオン』でもマスターを担当されますが、今の時点でどんなシナリオを提供したいと考えていらっしゃいますか?
風雅 先ほど月島さんがおっしゃられていた「プレイヤーの行動に妥当性があって、実現性があれば実現させる」というマスタリングは『クレギオン』でも心がけて行きたいと思っています。自分もマスターとして参加するにあたり、いろいろと勉強させていただきましたが、これまでの『クレギオン』はまさにプレイヤーの皆様の行動が作品世界の歴史として刻まれてきたものだと思いますので、新しい『クレギオン』でも、プレイヤーの行動によって新たな歴史が刻まれて行くようにしたいと考えています。
個人的には、SFが大好きなので、自律稼働するロステクが大暴れする話を描いてみたいですね。あとは壮大なSF世界であえて人情モノを描いてみるのも面白いかもしれないなと思っています。例えばスラムで暮らす子供の依頼をプレイヤーたちがいろいろと理屈をつけて、報酬を貰わずに引き受けてあげる展開とか……。
アイデアはいくつかありますので、実際にゲームが始まったらぜひ参加してみてください。
――風雅マスターはいろいろとアイデアを練られているとのことですが、月島さんは『クレギオン』で風雅マスターにどんなマスタリングを期待されていますか?
月島 風雅マスターは『クロストライブ』でメインシナリオを担当していただいたように大きなストーリーを描くことにも長けたマスターさんですが、一方で等身大の人間を描いて、素直に感動できるストーリーを描いてくださる方でもあります。
「『クレギオン』の設定は複雑で難しそう」と思っている人にも、風雅マスターは寄り添ってくれて、どんなプレイヤーでも楽しめるストーリーを描いてくださると思いますので、プレイしようか迷っている人は、ぜひ風雅マスターのシナリオに参加していただければと思います。
――最後に風雅マスターから『クレギオン』に期待している皆様にメッセージをお願いします。
風雅 歴史ある『クレギオン』という作品にゲームマスターとして参加させていだたくことを光栄に思います。先ほど月島さんにありがたいお言葉をいただきましたが、まずは月島さんのご期待に応えられるようシナリオの準備など、事前の準備に全力を尽くします。
そして、これまでの『クレギオン』をプレイされていた皆様のご期待に応えたいと思いますし、『クレギオン』に初めて触れるプレイヤーや『クロストライブ』をプレイしてくれていた皆様にも、『クレギオン』を楽しんでいただけるようマスタリングして行きたいと思います。
まだまだ至らぬところもございますが、暖かい目で見守っていただけると幸いです。
INTERVIEW / TEXT:斎藤ゆうすけ
注1……『クロストライブ』にはトライブと呼ばれる組織が存在し、『白のトライブ』、『黒のトライブ』、『赤のトライブ』の3つが三つ巴になって対立する設定が企画の発表当初から公開されていた。
注2……久潟椎奈マスターは風雅マスターとともに『クロストライブ』でマスタリングを担当し、『クレギオン』への参加も発表されている。今後、当インタビューにも登場する予定。
注3……月島氏の詳しい発言については前回のインタビューを参照。