
EXTRA:特集企画
<制作スタッフ インタビュー>
――久潟さんは『クロストライブ』でゲームマスターとしてデビューされたとのことですが、まずは『クロストライブ』に参加された経緯からお聞かせください。
久潟 元々、私はシナリオライター兼声優になりたくて、声優の専門学校に通っていたんです。私が学生だった頃、オンラインゲームで有名なガンホー・オンライン・エンターテイメント(以下、ガンホー)さんと私が通っていた専門学校で産学共同プロジェクトが立ち上がりまして、私もその企画に参加すべく学内オーディションに立候補したのが、『クロストライブ』に参加することになった、そもそものきっかけです。
実は当時、ガンホーさんで産学共同プロジェクトのプロデューサーをされていたのが、後に『クロストライブ』をプロデュースされることになる雑賀寛さんで、その時のご縁で『クロストライブ』への参加についてもお声がけいただきました。
――久潟さんが当時参加されていたガンホーと専門学校による産学共同プロジェクトとはどのようなものだったのでしょうか?
久潟 ガンホーさんが運営されていた『ヨーグルティング』(注1)という学園モノのオンラインゲームで、学内オーディションに合格した私たちが、サポーターとしてプレイヤーのみなさんのプレイをサポートするという企画でした。
『ヨーグルティング』では、ゲームマスターを風紀委員と呼称し、私たちサポーターは学級委員と呼称されていたのですが、学級委員はゲームにログインして、どうゲームを遊んでいいかわからない初心者さんをサポートしたり、ゲーム内で他のプレイヤーさんと一緒にゲームを遊んだり、ガンホーさんが主宰するゲーム内イベントのお手伝いをさせていただいたりしていました。
――実際にガンホーと専門学校の産学共同プロジェクトに参加されてみて、いかがでした?
久潟 その時はまだ若かったので、戸惑うことも多かったのですが、プレイヤーのみなさんが優しく接してくれて、本来なら私たちが理解していなくちゃいけないゲームの仕様についても、「これはこういうことですよ」と逆に教えていただいたりもしました。
オーディションに合格して、公式に近い立場でゲームに参加していたので、「もっと自分がプレイヤーさんを牽引しなくちゃ」と気負っていた部分もあったのですが、オンラインゲームはそういうものではなく、「プレイヤーさんと一緒に歩んでいくことが大事なんだ」と知ることができたことは、自分にとって大きな経験になりましたね。
――雑賀さんとの出会いがきっかけでシナリオライターを目指していた久潟さんは、『クロストライブ』にゲームマスターとして参加されることになったとのことですが、『クロストライブ』やPBWにどのような印象を持たれたのでしょうか?
久潟 当時は、そもそもPBWが何の略なのかも知らなくて、原作の月島総記さんや、別のPBWでゲームマスターを経験されていたみなさんに教えてもらいながら、ゲームマスターになるための研修から始めた感じです。
すでにシナリオライターとしての経験はありましたが、まだまだ駆け出しだったので、まだまだクライアントさんからのオーダーに応えるだけで精一杯だったのですが、PBWはクライアントさんからのオーダーでシナリオを執筆するのではなく、プレイヤーさんとゲームマスターが一緒に物語を作り上げていくところに魅力を感じました。
――実際にゲームマスターをされてみて、どんな感想を持たれたのでしょうか?
久潟 プレイヤーさんとゲームマスターが一緒に物語を作り上げていくという部分は、想像した通りでしたが、ゲームマスターは、ただプレイヤーさんが書いてきた文章を読んでシナリオを執筆するだけじゃなくて、「プレイヤーさんがどういう気持ちで文章を書いたのか」とか「プレイヤーさんはこの物語をどうしたいのか」とか、文章に込められたプレイヤーさんの熱い気持ちみたいなものを受け取るのが本来の役目だということがわかりました。
これはある意味、私が学生のころに参加していたガンホーさんと専門学校の産学共同プロジェクトにも通じるところがあって、オンラインゲームのプレイヤーキャラクターに、それぞれ自分の考えをもってキャラクターを操作しているプレイヤーさんがいるように、PBWのプレイヤーキャラクターにも、一人一人、そのキャラクターを大切に思っているプレイヤーさんがいらっしゃるんですよね。
学生の頃、産学共同プロジェクトで、オンラインゲームを楽しんでいるたくさんのプレイヤーさんと交流させていただいたことで、プレイヤーさんの想いを感じることの大切さを学ばせていただきましたし、PBWでゲームマスターをやらせていただくにあたって、当時の経験はすごく役立っていると思います。
――『クロストライブ』でゲームマスターをされていた中で、特に印象に残っている出来事はどんな出来事ですか?
久潟 『クロストライブ』は、ストーリー全体の方向性として、どうしてもシリアスなシーンが多めだったり、NPCがピンチにならざるを得なかったりすることも多かったのですが、プレイヤーさんたちは、NPCをすごく大切に思ってくれていて、NPCの危機を救おうと必死に行動してくれていたことが印象に残っています。
プレイヤーさんたちが一丸となって、NPCを助けるために行動して下さったことで、全体のストーリーとしては、途中で退場するはずだったNPCが助かったりと、まさにプレイヤーさんとゲームマスターが一緒になって物語を作り上げていく過程を体感することができました。
それとは、別に自分はシリアスな『クロストライブ』の中で、ギャグを担当することも多かったのですが、コミカルなシナリオの時はコミカルなシナリオの時で、突き抜けた行動をしてくださるプレイヤーさんも多くて(笑)。
コミカルなシナリオをどう書こうか迷っていた時期もあったのですが、プレイヤーさんから「久潟マスターにおまかせします」とか「もう、いいようにしちゃってください(笑)」など、私を信頼して行動を任せてくださるプレイヤーさんも増えてきて、すごく嬉しい気持ちになりました。
――『新クレギオン』にゲームマスターとして参加されるにあたって、『クレギオン』という作品にどんな印象を持たれましたでしょうか?
久潟 ゲームマスターとして『クレギオン』に参加させていただくにあたって、いろいろな資料を読ませていただきました。『クレギオン』世界の年表は、実際の世界史の年表と同じぐらい詳細で、年表を読ませていただいているだけで、何百人、何千人のプレイヤーさんと、歴代のゲームマスターさんたちが作り上げてきた歴史の重みを感じました。
私自身は、今までSF作品に触れたことがあまりないので、不安もありますが、『クレギオン』やSFについてしっかりと勉強して、私もプレイヤーさんと一緒に『クレギオン』の世界に歴史を刻んで行けたらと思います。
――久潟さんのようにこれまで『クレギオン』に触れたことがなかったプレイヤーさんにアピールしたいことがあればお願いします。
久潟 月島さんが企画原案を担当されるということで、『クロストライブ』のプレイヤーさんで、『クレギオン』に興味を持ってくださる方もいらっしゃると思いますし、単純に新作のPBWとして期待されている方もいらっしゃるかと思います。
私のように、これまで『クレギオン』やSFに触れたことがなかったプレイヤーさんも、『クレギオン』は広大な宇宙が舞台の作品なので、新しい惑星に降り立った宇宙飛行士のような感覚で、新しいジャンルを新規開拓していただけると嬉しいです。
30年もの歴史があるタイトルですので、『クレギオン』を長い間応援されているプレイヤーさんも多いと思いますが、そんな古参のプレイヤーさんと、新たに『クレギオン』に触れるプレイヤーさんが宇宙の片隅で出会うことで紡がれる新たな物語を、私もゲームマスターとして一緒に楽しみたいと思っています。
――『新クレギオン』への参加を検討されているみなさんにメッセージをお願いします。
久潟 今回も『クロストライブ』の時と同様に私が作ったオリジナルのNPCを登場させていただきたいと思っています。プレイヤーのみなさんがNPCとどう関わってくださるのか楽しみにしていますし、『クロストライブ』で私が経験したプレイヤーさんたちの想いの力を再び体験できることも楽しみです。
そして、「久潟マスターなら、ギャグのシナリオも担当してくれるはず」と思ってくださっているみなさんの期待にも応えられるよう、ギャグのシナリオも用意したいと思っていますので、シリアスが好きな方もギャグが好きな方も、よかったらぜひ『クレギオン』をプレイしてみてください。
「SF初心者なので心配」という方もいらっしゃるかと思いますが、私も初心者なので、一緒に『クレギオン』世界の歴史を紡ぎながら、SFを、そして『クレギオン』という作品そのものを好きになっていってくださると嬉しいです。
INTERVIEW / TEXT:斎藤ゆうすけ
注1……韓国のNtixsoft(現REDDUCK)が開発、neowizが運営していた学園を舞台にしたMMORPG。2005年から2010年にかけて、日本ではガンホー・オンライン・エンターテイメントが運営し、専門学校東京アナウンス学院との産学共同プロジェクトで、学級委員システムも導入された。