高天原祈の先代の『白の魔女』の名は、エリザベート・ディミトリエフ。
フランス・オルレアン異端教会本部のシスターにして、
約100年前の白黒全面抗争の生き残り。
心優しいが、戦闘力は極めて高い。
創造した植物と各種汎用魔法、
創造可能範囲を劇的に広める先代魔女の遺物『セシリアの薔薇』、
そして理性と引き換えに爆発的に魔力を高める固有魔法『魔力暴走』。
それらを併用する事で、戦略級・決戦級の戦場制圧力を発揮する。
弟子は山ほどいたが、最後の弟子は高天原祈。
エリザベートは8年間、祈と共に生活し、その上で自分の後継者にする事を決意した。
エリザベートが祈を認めたのは、天賦の魔術の才もさる事ながら、
むしろ彼女の心のあり方である。
決して力に狂わぬ芯の強さと、他トライブの魔術師をも救おうとする優しさは、
異端教会の真の理念そのものだ。
もっとも甘すぎるという者もいるだろう。優しいだけでは何も守れないのも事実だ。
だが組織として硬化しつつある異端教会を本来の姿に戻すためには、
今こそこのような娘が白の魔女になるべきだと、エリザベートは思った。
そして師は弟子に問うた。
「これから百年以上も続くかもしれない長い生涯を、全て教会の監視下に置かれ、
自由もなく、人権もなく、人が本来得られる幸せを何もかも捨ててでも、
人々を救うために生きたいか?
人間は残酷な生き物だ。いくら落とし児から世の人々を守ろうとも、
私たちの存在が世に知られれば、遠からず迫害されるだろう。
私の娘は魔女狩りで殺された。ほんの100年と少し前の話さ。
なぁ、信じられるか祈? 20世紀に入っても、魔女狩りは存続していたんだよ。
科学が発達しても、この世から神秘が駆逐されても、人間の心の奥底にある、
異端者に対する恐怖は消えない。
救済した者に石を投げられ、愛した者に火をかけられて、それでもなお微笑んでみせる、
それが白の魔女だ。
その事を理解した上で、お前は望むか? 白の魔女として生きる道を」
――弟子は即座に答えた。『望みます』と。
祈は齢わずか14にして、そう言ったのだ。
その答えの重みを知らないわけではない。祈は8年間エリザベートを見続けていた。全てを理解し、その上で答えた。
その意志こそが、白の魔女たる者の証。後継者の資格だった。
かくしてエリザベートは、祈を後継者に任命する。教会上層部は反対しなかった。
白の魔女は、異端教会内で特に優れた魔術の才を持ち、また教会のシンボルとなり得る者がなるのだ。教会での実務上の地位については、また別の話だ。そして祈はシンボルの条件を十全に備えていた。
次代の魔女は決まった。そしてその頃、長年にわたる魔術の過剰仕様によって、エリザベートの頭脳と肉体には限界が来ていた。
彼女は自身の最後の仕事を、ナハトブーフを討伐する事に決めた。
不死の秘密を探るためにも、あの男を討つ。結果敗れたとしても、恐らく祈が第二覚醒を遂げる。
どちらに転んでも悪くない。遺物さえ奪われなければデメリットは無い。エリザベートはそう考える女だった。
彼女の最後の戦場となったのは、フランス・ドイツ国境付近の草原。
季節は初夏、時刻は深夜2時。
戦いの様子は、エリザベートの身にかけられた魔法により、全て教会上層部に遠隔伝達されていた。
それを聞いた祈は、師の元へ走った。
戦場に着いたのは、全てが終わった後だった。
![](https://static.wixstatic.com/media/bd1747_e8e065f1058c478386314b48aab99cdc~mv2.jpg/v1/fill/w_980,h_551,al_c,q_85,usm_0.66_1.00_0.01,enc_auto/bd1747_e8e065f1058c478386314b48aab99cdc~mv2.jpg)
――そこには見渡す限りの花が咲いていた。
月明かりの中に漂う黒霧が、風に融けて消えていく。
そして花々もまた、見る間に散り行き、辺りは元の草原に戻っていった。
その中に残った、一輪の大きな薔薇。
それは132年の生涯を、人々を救うために生き続けた女の遺物。
白の魔女エリザベート・ディミトリエフの、命の証だった。
む、なんか任侠映画っぽくて恰好いい口上だな。
そして言われて見れば祈の背中の薔薇って、彫り物っぽく見えるな。そう思うと粋かな…?
ちなみに↑は、まだCTⅠが運営していた頃に書かれた、お蔵出しテキストらしい。
各トライブ幹部の過去を掘り下げる為に書かれたのだけど、内容的にクエストにもストーリーにも使いづらく、発表の機会を逸してしまってね。
でもなんとなくもったいないから、今更ながら投稿してみたとの事さ。
ほんの数年前の出来事だが、あの頃から見るとずいぶん平和になったんだなぁと思うね。
先代魔女の生き様も尊敬するが、やはり平和が一番だよ(しみじみ)
最後は誌的で奇麗なシーンやけど、死闘の果てやもんな……
白い僧衣を染める、返り血の赤い薔薇やな。
背なに咲かせた薔薇一輪、先代譲りの暴れ花。
もろ肌脱いで御披露目したら、もう誰にも止められへん。
女だてらの暴走天使、大槌背負って殴り込み、ちゅーわけや。
祈ねーちゃん、遠山の金さんみたいでかっこええな!
GMをやれるほどまとまった時間が取りずらいので、ちょっとNPCに関するショートストーリーを投稿してみたよ。
こりゃなんというかファンサービス的なものであって、TRPGの内容にはあまり関係ないけど。
公式設定という訳でもないし、まぁ気軽に眺めて頂ければ嬉しいかな。